- INTERVIEW #03
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見る人に確かな祈りを届ける仏像を目指して
仏師
ただ1点を見つめ静寂のなかにたたずむ仏像を目にしたとき、私たちは心の中に言いようのない一筋の安らぎを見つけることができる。仏師・加藤巍山が手掛ける仏像もまた、そうして多くの悩める人の心に安らぎをもたらしてきた。今や日本のみならず世界にもその名が知られる名匠加藤に、制作にかける思いを聞いた。
スタジオミュージシャン
からの
異例の転向
あまり聞き馴染みがないという人も多いであろう職業・仏師。仏像制作を専門とした職人だ。その繊細な表現で世界に誇る仏師として地位を確立した加藤だが、意外にもスタジオミュージシャンだった経歴を持つ。
「もともとギターを弾いていたのですが、追い込みすぎる性格のためか、あるとき手が全く動かなくなってしまったんです。仏像との出会いは、ギターを諦めてもう休養するしかないと一人旅に出たときのことでした。とある鎌倉の寺院に祀られた阿弥陀如来像を見て、あまりの美しさに衝撃が走ったのを覚えています」
それまで全く知らなかった世界だったからこそ、その美しさに気付いた時に衝撃を受けるとともに、絶望の中で見た仏の姿に「救われたい」という思いと「彫りたい」という思いが同時に湧き上がってきた。
「雑誌を見ていたときに偶然仏師という職業を知り、その雑誌に掲載されていた仏師の先生のもとを訪ね、そして弟子入りを志願しました。それから13年間、ひたすら木を彫るだけの修行期間が続きました。独立後も先生の仕事を手伝ったり、展覧会に作品を出品したり…。独立当初は収入が少なく、数年間はアルバイトをして生活費を賄っていました。週に1回食べるシュークリームが何よりのご褒美でしたね」
過酷な修行時代を経て、生み出された珠玉の作品たち。目にしたときに感じる清らかな空気感は、仏師として活動するなかでの加藤のこだわりだ。
「仏像には千年以上の時代を経て築き上げられた様式美があります。それゆえに、こういうふうに彫りたい、という自意識を反映させないようにしているんです。技術的にも精神的にも研ぎ澄まし、自分自身を透明にして、ただ仏が導く線に沿って形を作っている感覚です」
コンディションの維持が
制作を加速させる
加藤の仏師としての1日は、ほとんどが制作に充てられる。制作時間は午前7時から午後8時まで。
「制作時間はもちろん、制作の合間の食事、休憩、入浴…起床から入眠まで、365日すべての時間をおおよそ決めています。プレイヤーとして生活のリズムを整えて、コンディションを維持するようにしているんです。実は、洋服も同じものを何着もそろえているので、もしかすると取引先の方からは一着しか服を持っていないと思われているかもしれませんね。日々思考しなければならないことや、重要な意思決定のために、考えないで済むことは合理的に済ませています。ただ、時々人恋しくなって、近所のコンビニエンスストアでホットコーヒーを飲んで、行き詰まった気分を紛らわしています」
意外な素顔を見せながらも、やはり手掛ける作品は超一級。
現在取り組むのは、多聞天立像(四天王の一尊)だ。頭部や胴体など、部分ごとに制作を行い組み合わせる寄木造りの作品で、組み上げると2メートル以上にもなる。制作期間は延べ9ヶ月程。原型制作や準備を含めると2年近くかかっているという。
「仏像は、仏様のお姿を定める儀軌という規則や、立った像を10等分して体の幅や手の位置などのポイントを決める木割法に則って造像します。さらに、私は木を彫る前に粘土で原型を作ったあと、専用のコンパスを使って原型と全く同じ形に彫る星取り技法という方式を併用して制作しています。かなり地味かつ単調で、緻密な作業です」
目力が試される
仕上げ作業
時にはモデルとなる仏像の資料を眺めて熟考したり、時には原型を眺めて木を彫ったり…。制作現場に伺ったインタビュー当日も、するどい視線で多聞天立像の頭部を彫る姿が印象的だった。
「どの工程も神経を使うのですが、やはり仕上げのときは高い集中力を要しますね。非常にナーバスになります。部屋を暗くして、ライトで光を当てながら、狂いを探し、少しずつ削って形を整えていくんです。だから仕上げの作業に入ると、かなり目に負担がかかっているのがわかります。次第に疲れがでてきて、ひどいときには目が真っ赤に充血していることも…。だから作業の合間で疲れたときには目薬を使っています。疲れが取れるので、作業に集中するためにも目薬を使っています」
過酷な制作だからこそ、健康への意識は高いようで「太陽の光を浴びなきゃといつも思っています」と笑う。
「技術的なスランプに陥ることはほとんどなく、制作がストップするのは決まって体に不調があるとき。千年後の未来に作品を残すために、妥協を許さず持てるすべてを出し切れるようにしなくてはなりません」
生活のルーティンを守り、目薬を活用しながら継続的に目のケアを行う背景には、作品を作り続けていくための思いがあった。
あらゆる壁を超えた
作品を生み出すために
仏師として注目を集める加藤だが、修業時代から展覧会などに出品する彫刻作品も手掛けており、今後は今まで以上にアート作品にも力を入れ、活動のフィールドを世界に広げていきたいのだという。
「ウェブサイトには海外からの問い合わせも数多くいただいているのですが、ある日、カリフォルニアの方から『あなたの作品とその制作姿勢は、今日、世界の至る所で苦しんでいる人々に安らぎを与え、感動させることに貢献しています』というメールが届きました。そのとき宗教や言語、国などを超えて祈りを届けられる作品を残していきたいと強く感じたんです」
世界中から評価されていることへのプレッシャーを問うと「もちろんあります」と語っていたが、その瞳にはそれらを凌駕するほどの野心がきらめいていた。あくなき挑戦はこれからも続いていく。
PROFILE
かとう ぎざん
加藤 巍山
仏師
仏師。寺院などから依頼を受け、日本の伝統技法と西洋の彫刻技法を併せ用いて仏像を制作。また、日本の古典や歴史、仏教や神話を題材とした作品も手掛ける。チャリティー活動も精力的に行っているほか、2020年クリスティーズNY(日本・韓国美術)に出品した「示現・Ⅰ」が話題を集めた。
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